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禁断の市場 −フラクタルでみるリスクとリターン−

書評 science

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

ベノワ・マンデルブロは物理学などを専攻した読者には馴染み深い名前かもしれない。著者の名を知らなくとも、彼が考案した代表的なフラクタル図形を目にしたことのある者は多いと思う。木の葉のような図形があり、その細部を拡大すると同じ図形がそこに顕れ、更にその細部を拡大するとまた同じ図形が顕れて、それが無限に繰り返される例の図形だ。そのフラクタルと市場の値動きが深い関係にあると説くのが本書の趣旨となっている。
例えば、1年間の株価の動きを示すチャートと1ヶ月の株価のそれ、1週間の、1日のそれを比較すると全く同様のパターンが見られるが、それがまさにフラクタルなのだ。その変動の規則を調べると、従来の経済学や金融工学の常識とは全く異なった現実が浮かび上がってくる。
原著の出版は2004年とあるので、金融の先端に詳しければ古い情報ばかりかも知れない。私のような素人でもネットを遊弋していれば、ブラック・ショールズ方程式に根本的な不備があることくらいは知るようになる。しかし、伝統的な経済学のパラダイムを殆ど全否定する明言がなされているので、経済や金融に係わる者にとっては必読書だと言えそうだ。無論、経済学と自然科学の関連にも純粋に科学的な好奇心が刺激される。
そして現在では、マンデルブロの研究は「経済物理学」と呼ばれる新しい物理学の分野に取り入れられ、日本でも発展しているようだ。本書を補完する好著として、以下もオススメです。
経済物理学の発見 (光文社新書)

経済物理学の発見 (光文社新書)

http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/takayasu.html氏は上記の監訳者で、マンデルブロの元で研究したこともある、経済物理学の草分け。