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量子力学の解釈問題 −実験が示唆する「多世界」の実在−

書評 science

量子力学の解釈問題―実験が示唆する「多世界」の実在 (ブルーバックス)

量子力学の解釈問題―実験が示唆する「多世界」の実在 (ブルーバックス)

完成された体系と言われて久しい量子力学にも、未解決の領域が未だ存在する。シュレーディンガーの猫はその代表格だが、物理学を学ぶ学生にとっても、結局何を言いたいのか良く分からないのがこの猫の逆説らしい。僕も学生時代には意味不明だった。
量子力学の解釈問題とは何か。ぶっちゃけ簡素化すると、設問 『さて今この瞬間、箱に閉じ込められた猫は生きているでしょうか、死んでいるでしょうか』 に対する解答のこと。代表的な解答例を挙げると、

猫が「量子」でできているならば、猫は隔離されているうちは生きてもいるし死んでもいる。そして、人がフタを開けて中を覗いた瞬間に、生きているか死んでいるかがピッと決まる。そのような性質を持つものが量子なのだ。注意すべきは、覗いたから生死が決まったのではなく、また、生死が決まったから覗かれたのでもないということだ。「覗く」つまり「観測」と、「生死」つまり「状態の決定」との間に因果関係はなく、ただ同時にそれが起こると考えなければいけないのが、量子の性質の奇妙なところだ。

この考え方を「コペンハーゲン解釈」と言って、大学の教科書には普通こうした説明が書かれている。シュレーディンガーは 『生きてもいるし死んでもいる状態なんてありえないだろ。だから量子力学(コペンハーゲン解釈)は間違いだ』 と主張したのでした。
さて現在では、量子論の専門家の間では、上の解答とは異なる「多世界解釈」が主流になりつつあるらしい。猫が生きている世界と死んでいる世界に分岐するという発想なのだが、本書は、その多世界が実在するということを、さまざまな思考実験によって論証しようとする試みだ。それが成功しているかどうかは、今のところ何とも言えない。多世界解釈でしか決して説明できない量子実験が可能なら、信じられると言ったところか。しかし、知的好奇心旺盛な物好きの欲求を大いに満たしてくれる快著であることに間違いはない。
ちょっと古いけど、こんなのもありました。
「シュレディンガーの猫の核心」が核心をついていない理由 - 分裂勘違い君劇場