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暴走する資本主義

暴走する資本主義

暴走する資本主義

本書は、我々生活者が持つ社会的二面性を鋭く指摘している。
二面性とは、社会正義や社会的公正を望む市民としての側面と、より良い商品をより安く求める消費者としての側面のこと。あるいは、企業が大きな利益を上げて、より大きなリターンを期待する投資家としての側面ことだ。そしてこの両者、つまり市民としての自分と、消費者/投資家としての自分の利害は対立する。企業に高品質な製品やサービスを低価格で提供しろと要求すれば、企業は従業員の待遇を削ること等によって価格を下げなければならないし、投資家がより大きな見返りを要求しても同様だ。そうして、従業員が悲惨な労働を強いられたり、企業が自然環境に全く配慮しなくなったりすれば、市民としての自分がそれらに義憤を抱いたりする。しかし、企業が社会貢献的でない行動をとる理由は、我々の持つ消費者/投資家としての側面が、企業にそう要求したからなのだ。このパラドックスが大きく浮上し、もはや無視できないほど社会に負荷を掛けていると著者は考える。
社会にとって何が適切なのかを考えずに、消費者/資本家(としての自分)が自我の欲求を満たすことを最優先させる産業の仕組みを超資本主義と呼び、それを克服するための処方箋が具体的に提案されている。と言っても著者の主張は資本主義の否定ではなく、飽くまでも「資本主義の最適化」だ。著者はオバマ候補のブレーンらしく、氏が大統領になれば、本書での提案がある程度実現するのではないか。だとすれば、日本の政治家や官僚、あるいは産業界の中枢のひとにとって必読書かも知れない。
詳細は読んでいただくとして、本書で指摘されるような、先鋭化した資本主義が何故隆盛を極めることになったのか。個人的にはもっとマクロな理由があると思う。それは、蒸気機関の発明以来の産業革命が終焉を向かえ、工業化文明による経済の拡大が限界に到達したことが原因なのだと思う。文明の発達が飽和点に達し、どうあがいても経済が縮小均衡する時代に突入しているのに、それでも持続的に成長しようとする欲望が、資本主義を先鋭化させているのだろう。パイを拡大させる競争から、拡大しないパイを奪い合う競争へと産業のモードがシフトしてしまった。それが、著者の言う超資本主義の正体だ。
こうした状況に対応するには、成長は微妙な程度でよしとし、それでも生活の質を高める方法を考案しつつ、次の文明の波がおし寄せてくるのを待つのが賢明なやりかたかも知れない。具体的には、また機会があれば検討してみたいが、今言った次の文明が何かと言えば、それはもちろん情報文明でしょう。既に萌芽し急速に発展しているので、あと20年もすれば、また経済がダイナミックに発展して行くことになると期待しています。
こちらも参考。
http://diamond.jp/series/worldvoice/10019/