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2050年の人口予測は当てにならないかも

メディア・パブ: 2050年の人口予測,大変な時代に突入へ

今回の発表資料“2008 World Population Data Sheet”のようにまとめて眺めてみると,改めて大変な時代を迎えようとしているのを認識してしまう。

上記リンクでは2050年になっても中国やインドでは人口爆発続き、日本のそれは25%も減少するという予測が紹介されています。こうした人口問題について非常に興味深い書籍があるので取り挙げてみましょう。実は以前に言及したことがありますが、この問題をマクロな視点から論じていて、とても面白いので再登板していただきます。

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書)

日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト (幻冬舎新書)

人類は、その誕生以来一様に人口を増加させてきた訳ではなく、人口の増加期と減少期を繰り返してきた。最初の人口増加トレンドは旧石器時代に始まり、旧石器時代後期に人口は減少する。次に、新石器時代の始まりと共に再び増加を始めて、この終盤にはまた減少に転ずる。そして農耕文明の時代に入ってから三度目の人口増加が始まり、途中一旦停滞した後、また増加を始めて中世に再度減少するが、工業の発展とともに再び増加を始める。そして、現在は先進国では人口減少トレンドに入っていると考えられる。
このように人類の人口増減には波があり、決して一様に上昇してきたのではない。そして、この波のパターンをよく見ると、文明の端境期に人口が減少し、次の文明の波が押し寄せてくると共に増加に転じていることが分かる。本書にはデータに基づいたグラフが掲載されているが、それを表にまとめてみるとこうなる。

【紀元前数万年〜紀元前1万年頃】
 旧石器時代の開始:最初の人口増加開始:6百万人まで増加
 旧石器時代の末期:最初の人口減少

【紀元前1万年〜紀元前5千年頃】
 新石器時代の開始:2回目の人口増加開始:5千万人まで増加
 新石器時代の末期:2回目の人口減少

【紀元前5千年〜1世紀頃】
 前期農耕文明の開始:3回目の人口増加開始:2.6億人まで増加
 前期農耕文明の末期:3回目の人口減少

【1世紀〜15世紀頃】
 後期農耕文明の開始:4回目の人口増加開始:4.5億人まで増加
 後期農耕文明の末期:4回目の人口減少

【15世紀〜21世紀頃】
 前期工業文明の開始:5回目の人口増加開始:90億人?まで増加
 前期工業文明の末期:5回目の人口減少 ←日本は今ここ

【21世紀〜】
 後期工業文明の開始?:6回目の人口増加開始?

植えっぱなしのような粗放な農業を行っていた頃が前期農耕文明で、作物の栽培方法が発展してシステマティックになった農業の普及以降が後期農耕文明とされている。この表から読み取れることは、世界が収容し得る人口は文明の性質によって決まり、狩猟採集社会⇒農耕文明⇒工業文明と文明が発展するに従って人口の容量は拡大するということだろう。無論、狩猟採集社会を「文明」と呼べるかは別の話として。
現代社会は前期工業文明の終盤に突入しているために、先進国では人口が減少しているというのが著者の意見で、今後、後期工業文明が発展すれば先進国でも再び人口は増加に転ずるという。(アメリカはちょっと変?) では後期工業文明とは何かといえば、環境破壊してでも工業発展を目指す粗放な工業文明が「前期」であったならば、「後期」はより成熟し洗練された工業文明のことだという。
著者はデータや図表、様々な学説やアカデミックな論理を多用することによって、マクロな視点から文明と人口の関係を説得力を持って論じている。それだけでなく、文化的な人口抑制システムや今後の生活様式などにも言及しているため、充分過ぎるくらい学術的でありながら、無味乾燥な経済学書の類とも異なる文化的食感も本書の特徴だろう。読み物としても楽しめる。
個人的考えをちょっと追加しておくと、後期工業文明とは「情報文明」のことだと僕は考えているが、その情報文明によって、日本の人口は2050年を待たずして再び増加トレンドに入ると思う。中国やインドについては、今の工業文明は既に飽和点に達しているので、人口増加はそのうち頭打ちになるはずだ。現時点での動向による未来予測はいつも当てにならない。
そして気が付いたことは、その文明が持つ人口容量と経済容量は比例するということ。経済容量とはその社会が持ち得る富の総量のことだ(今思いついた概念)。日本の経済が長期停滞している理由は、最もマクロな視点で見れば、日本で前期工業文明が持ち得る経済容量一杯にまで経済が発展してしまって以降、次の文明へとスムーズにシフトできていない、というかしようとしていないからだと思える。