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重力の再発見 −アインシュタインの相対論を超えて−

重力の再発見―アインシュタインの相対論を超えて

重力の再発見―アインシュタインの相対論を超えて

銀河を公転する恒星は、銀河円盤の外縁付近でも公転速度があまり低下しない。この現象は既存の力学では説明のつかない観測事実だ。
例えば、地球を周回する人工衛星は、地上からの高度が高いほどゆっくり地球を回る。高度350Kmを周回する低軌道衛星は90分で地球を一周し、高度36,000Kmの静止衛星は24時間で地球を一周する。太陽を公転する惑星も同様で、水星は88日で太陽を一周し、地球は365日、海王星は165年を要する。しかし、銀河を周回している恒星はこうした法則に従わず、外縁付近でもかなりの速度で公転しているらしい。
この理由を説明する主流の説では、銀河をハローのようにダークマターが取り囲んでいるために、その重力場の効果によって公転速度が保持されると考えている。ダークマターは宇宙を理解するために不可欠な存在なので、その検出が試みられているが成功していない。果たして、重力にしか反応しないために観測にかからない、こんな奇妙な物質が本当に存在しているのだろうか。
著者のモファットは、ダークマターが存在しなくても公転速度の謎を説明できる重力理論「MOG」を提唱する物理学者であり、その成果を本書で一般向けに解説している。
MOGはアインシュタインの一般相対論を改訂する新しい重力理論であるために、多くの物理学者は否定的な反応を示すのだろうが、流行のスーパーストリング理論と違って、宇宙物理学の様々な未解決問題に検証可能な形で解答を与えると著者は主張する。本書にはその実例が示されていて、例えば、連星パルサーにおける中性子星の軌道、衛星銀河や球状星団に含まれる恒星の運動、こうしたものをシンプルに説明でき、また、慣性の法則はMOGから導けると言う。
革命的な理論でありながら、オーソドックスな方法論に則っているために、検証が比較的容易であることがMOGの最大の強みなのだろう。
異端で終わってしまわないかも知れない新理論を味わってみるのも、また一興だと思う。